いま旬の時期を迎えているトラフグ。猛毒があり、専門の免許をもった調理人しか扱えない危険な魚ですが、
刺身や鍋、唐揚げなどいろんな食べ方でいただくことができる人気の高級魚です。
愛知県の天然トラフグの漁獲量が全国有数であることを知っていましたか?
県内では昨年10月から始まったトラフグ漁がピークを迎えています。そんな水揚げの現場を見ようと、
漁の盛んな南知多町の篠島をたずねました。

知多半島の先に浮かぶ離島の篠島を訪れたのは、12月下旬のとある日。この日は雲ひとつない晴天で、
真冬であることを忘れてしまうぐらいの暖かさでした。南知多町の河和港から高速船にゆられること約30分。
穏やかな波間を進むと、あっという間に島が見えてきます。この篠島は、
伊勢湾と三河湾にはさまれたなかにあって、500隻近くの漁船が稼動する県内でも最大の漁業地区です。
タイ、シラス、伊勢エビ、アナゴなど一年を通してたくさんの魚介類が水揚げされています。
午後3時過ぎに漁港の魚市場へと向かうと、ちょうど水揚げが始まったところでした。
この日は今月にはいって2回目の漁。
港につけた漁船からは、とれたばかりの活きたトラフグが漁業者やその家族らによって、
市場にならぶ大きな水槽へと移されています。水槽のなかをのぞきこむと、
丸々とした愛嬌ある表情のトラフグがゆうゆうと泳いでいました。
なかでも、2キロを超えるトラフグはかなりの大きさで、鮮魚専門店などの水槽で見かけるものとは大違い。
あまりの大きさに驚き、しばらく見入ってしまいました。
入札は午後4時すぎに始まりました。漁協担当者がかけ声をあげると、仲買人らがそれぞれ書き込んだ値札を
渡していきます。もっとも高値を示した仲買人の札が水槽に投げ込まれ、
目の前のトラフグがあっという間に競り落とされていきます。
同時にすぐに隣の水槽へと入札は移り、取り引きは休む間もなく続きます。
市場の外では、活魚を運搬する専用のトラックが待機。
仲買人が競り落としたトラフグを駆け足で運んでいきます。
その間にも、空いた水槽には漁船から新たなトラフグが移され、市場はさらに忙しさを増していきます。
この日の入札は5時半まで。水揚げは約2.7トンでした。
気がつけば日も沈んで、市場内には明々と照明が。入札が終わると同時に、
体の芯まで冷えそうな寒気におそわれました。

(右)この日の入札は午後4時すぎから5時半まで続きました
トラフグは延縄という漁法でとられています。現在、篠島でこの漁を行っているのは47隻。
主な漁場は愛知、静岡県沖の遠州灘で、夜中の午前1時ごろに漁港を出て操業し、午後3時すぎに帰港します。
魚市場での入札を前にして、「今日はあまりとれなかった」と話すのは漁師歴19年になる辻貴人さん。
この日の漁の模様やトラフグのことなど、いろいろと教えてくれました。
「ブランド化して、もっとピーアールしていければ」といった言葉から、
島の基幹産業である漁業を守って、次の世代へつなげていきたいという気持ちが伝わってきました。

市場では「もっと島内でトラフグの消費が増えてくれれば」といった漁業関係者の声も耳にしました。
ブランド化による消費拡大には大きな期待が寄せられています。
篠島には、トラフグ料理を食べることができる民宿や飲食店がたくさんあります。
船着場から歩いてすぐのところにある「魚菜食堂」もそのひとつ。
「冬はフグ目当てで訪れるお客さんが多いですよ」と話すのは、食堂を経営する新美洋子さん。
実家が漁業と民宿を営んでおり、魚市場の入札に参加する権利ももっていることから、
フグをはじめ旬の新鮮な魚介類を使って、いろんな料理を提供しています。
昔は地元で消費されることがほとんどなく、下関などへ出荷されていたというトラフグ。
その当時は、島でもフグ料理を食べることができる店はまだ少なかったそうです。
なんとか地元の魚として売り出そうと、旅館業を営む若手が集まって、
フグの調理師免許を取ったのが14年前のこと。
当時20歳だった新美さんも参加して免許を取得。それを機に食堂で刺身やちり鍋、
唐揚げ、ヒレ酒などを提供するようになったそうです。
「トラフグが特においしいのは1、2月。篠島のブランドとして定着してほしいですね」。
笑顔で話してくれた新美さんの言葉からも、この島への深い思いを感じとることができました。

(右)昔から漁業が盛んな篠島。漁港には多くの漁船が並んでいます
これまでにも何度か篠島には行ったことがありましたが、トラフグ漁がこれほど盛んであることは
知りませんでした。高級魚であることからなかなか食べる機会のない魚ですが、
魚市場で実際に見ることができ親しみもわきました。
島で出会ったみなさん、どの方と話していても伝わってくるのは島をもっと元気にしたいという思いです。
すばらしい景観や歴史・文化遺産など見所も多い篠島。次回はゆっくり島内を散策して、
旬の海の幸をたっぷり味わってみたい。もっと篠島の魅力にふれてみたいと思いました。
(新美貴資)
| 店名 | 魚菜食堂 |
| 住所 | 愛知県知多郡南知多町篠島浦磯1-201 |
| TEL | TEL:0569-67-2929 (営業時間外のお問い合わせは姉妹店「漁師民宿たから舟」TEL:0569-67-2024 |
| 営業時間 | 11:30〜14:30 |
| URL | 魚菜食堂 http://www.d8.dion.ne.jp/~n-yo/(「漁師民宿たから舟」のサイトから見ることができます) |
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